ココロの習慣ラボ

心が軽くなる心理学習慣:ネガティブ感情に気づき、良いことを見つける方法

Tags: 心理学, 習慣, 感情, ストレス, ポジティブ

なぜ、私たちはネガティブな感情に振り回されやすいのか

日々の生活の中で、私たちは様々な感情を経験します。楽しい、嬉しいといったポジティブな感情もあれば、不安、イライラ、落ち込みといったネガティブな感情もあります。特に、仕事や人間関係でストレスを感じやすい状況では、ネガティブな感情に心が囚われてしまい、なかなか抜け出せないと感じることもあるかもしれません。

なぜ、私たちはネガティブな感情に注意を向けやすく、そこから抜け出しにくいのでしょうか。心理学の一部の考え方では、これは人間の生存本能に根ざしたものと考えられています。危険や脅威に敏感であることは、生き残るために有利だったからです。しかし現代社会では、この傾向が過度な心配やストレスの原因となることもあります。

また、新しい習慣を身につけたいと思っても、三日坊主になってしまう経験は誰にでもあることです。習慣化にはエネルギーが必要に感じられ、なかなか最初の一歩を踏み出せなかったり、続けていくうちにモチベーションが維持できなくなったりします。

「ココロの習慣ラボ」では、このような日々の困難に対し、心理学に基づいた簡単で実践しやすいテクニックをご紹介しています。今回は、ネガティブな感情との向き合い方を少し楽にし、日常に穏やかな視点を取り戻すための、二つの簡単な心理学習慣をご紹介します。どちらも特別な準備は必要なく、短時間で始められるものです。

習慣1:感情に「名前をつける」練習

ネガティブな感情に圧倒されそうなとき、私たちはその感情そのものになってしまったかのように感じることがあります。例えば、不安を感じているときに「私は不安だらけだ」と考えてしまうような場合です。このような状態では、感情から距離を置くことが難しくなります。

ここで役立つのが、「感情のラベリング(名付け)」と呼ばれる簡単なテクニックです。

実践ステップ

  1. 今、自分がどんな感情を感じているかに気づきます。
  2. その感情に、心の中で、あるいは声に出さずに「名前」をつけてみます。
    • 例:「ああ、今少しイライラしているな」
    • 例:「これは、ちょっとした不安かもしれない」
    • 例:「なんだか、モヤモヤする感じだ」

なぜ効果があるのか(心理学的な背景)

感情に名前をつけるという行為は、感情そのものから自分を少し切り離し、それを客観的に観察する手助けになります。心理学の研究では、このように感情を言語化することで、脳の扁桃体(感情、特に恐怖や不安に関わる部位)の活動が鎮静化することが示唆されています。感情を「自分自身」ではなく「自分が感じているもの」として捉え直すことで、感情に飲み込まれにくくなり、心が少し落ち着く感覚を得やすくなるのです。

習慣化のコツ

習慣2:小さな「良いこと」を見つける練習

ネガティブな感情に心が向きやすいとき、私たちは日常の中のポジティブな側面に気づきにくくなりがちです。しかし、どんな一日にも、見方を変えれば感謝できることや、少しだけ良かったこと、楽しかったことなどが隠れているものです。意図的にそのような「小さな良いこと」に目を向ける練習は、心の状態を穏やかに整える助けになります。

実践ステップ

  1. 1日の終わりなど、落ち着ける時間を設けます。
  2. 今日一日を振り返り、「良かったこと」「感謝できること」「少し楽しかったこと」「うまくいったこと」などを1つか2つ思い浮かべてみます。
    • 例:「朝のコーヒーが美味しかった」
    • 例:「通勤途中に綺麗な花を見かけた」
    • 例:「ランチタイムに同僚と少し笑い合えた」
    • 例:「頼まれていた仕事を一つ終えることができた」
  3. 可能であれば、それを簡単にメモします。

なぜ効果があるのか(心理学的な背景)

この習慣は、心理学で研究されている「ポジティブ感情」を育むアプローチの一つです。私たちの脳は、意識的に注意を向けたものを認識しやすくなる性質があります。ネガティブな側面にばかり注意が向いている状態から、意識的にポジティブな側面に目を向ける練習をすることで、日常の中に喜びや感謝を見出しやすくなります。これは「注意のバイアス」を意図的に変えることにつながり、長期的に見ると幸福感の向上やストレス軽減に繋がることが研究で示唆されています。

習慣化のコツ

心を軽くするための小さな一歩として

今回ご紹介した二つの心理学習慣は、どちらも非常にシンプルです。感情に名前をつける練習は、感情に飲み込まれそうになった時に立ち止まり、自分を取り戻す助けになります。小さな良いことを見つける練習は、見過ごしがちな日常のポジティブな側面に光を当て、心の視野を広げてくれます。

どちらの習慣も、初めは意識して行う必要があるかもしれません。しかし、続けていくうちに自然とできるようになり、ネガティブな感情とうまく付き合い、日常に穏やかな視点を見出すための確かな習慣となる可能性があります。

完璧を目指す必要はありません。まずは「できるときに、できることから」始めてみてください。これらの小さな習慣が、あなたの毎日を少しでも明るく、心穏やかに過ごすための一助となれば幸いです。