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「もし~なら、~する」習慣:心理学に基づいた行動を始める簡単なテクニック

Tags: 習慣化, 心理学, if-thenプランニング, 行動変容, 目標達成

日々の生活をより良くしたいと考えたとき、新しい習慣を取り入れたいと思うことは多いかもしれません。例えば、「毎日運動する」「寝る前に読書する」「朝一番にメールチェックをしない」など、さまざまな目標があるでしょう。しかし、いざ始めようとしても、なかなか行動に移せなかったり、三日坊主になってしまったりすることは少なくないかと思います。

なぜ、良い習慣を身につけることはこれほどまでに難しいのでしょうか。それは、私たちの脳が「いつ、何を、どのように」行うかを、意識的に考え、決断するプロセスを経る必要があるからです。この決断プロセス自体が、実は私たちのエネルギーを消費し、行動を始める際のハードルとなってしまうことがあります。

そこで今回ご紹介したいのが、心理学に基づいた「if-thenプランニング」という簡単なテクニックです。これは、特定の「もし(if)」の状況が発生したら、特定の「なら(then)」の行動をとる、とあらかじめ決めておく方法です。このシンプルなルール設定が、行動を自動化し、習慣化を強力に後押ししてくれます。

if-thenプランニングとは何か

if-thenプランニングは、ドイツの心理学者であるピーター・ゴルヴィツァー氏によって提唱された目標達成のための戦略です。これは、目標達成に向けた具体的な行動について、「もし〇〇(きっかけ)になったら、△△(行動)をする」というシンプルな形で計画を立てることを指します。

例えば、「週に3回運動する」という目標がある場合、if-thenプランニングでは「もし月曜日の仕事が終わったら、すぐに着替えてジョギングに行く」「もし水曜日のランチ休憩になったら、会社の近くのジムで筋トレをする」のように、行動を起こすための具体的なきっかけ(時間、場所、先行する行動など)と、それに続く行動をセットで定義します。

重要なのは、「〇〇になったら、必ず△△をする」と、行動を特定の状況に紐づけておくことです。

なぜif-thenプランニングが習慣化に効果的なのか

この「もし~なら、~する」という形式が、なぜ私たちの行動を促し、習慣化を助けるのでしょうか。その背景にはいくつかの心理学的な理由があります。

  1. 脳の負担を減らす: 事前に「いつ、何をするか」を決めておくことで、実際にその状況になった際に「どうしようかな」と考える必要がなくなります。脳は既に決定された計画に従って行動を起こす準備ができるため、行動を開始するまでの心理的なハードルが大幅に下がります。これは、行動をスムーズにする一種の「自動化」と言えます。
  2. きっかけへの感度を高める: if-then形式で計画を立てると、脳は設定した「もし」の状況(きっかけ)に対して無意識のうちに敏感になります。例えば、「もし夕食を食べ終わったら」と設定していれば、夕食後に自然と次の行動(then)を意識しやすくなります。これは、「目標意図」をより具体的な「実行意図」へと変換する効果があると考えられています。
  3. 外的要因への対応: 習慣化を妨げる要因の一つに、予期せぬ出来事や誘惑があります。しかし、if-thenプランニングで具体的な状況を設定しておけば、「もし〇〇な状況(例えば、急な誘い)になったら、△△(例えば、運動の時間を少しずらす、断る)という代替行動をとる」といった計画も立てることが可能です。これにより、困難な状況でも計画を完全に諦めるのではなく、柔軟に対応しやすくなります。

if-thenプランニングを日々の習慣にするためのステップ

if-thenプランニングを実際に活用し、習慣化につなげるための具体的なステップをご紹介します。

  1. 習慣にしたい行動を明確にする: まず、どのような習慣を身につけたいのか、具体的な行動を一つ選びます。漠然とした目標ではなく、「毎日5分間瞑想する」「週に2回、自宅で筋力トレーニングを行う」のように、計測可能で具体的な行動を設定することが大切です。
  2. 行動を起こすための「きっかけ」を決める: その行動を、いつ、どこで、どのような状況で行うかを具体的に決めます。既存の習慣の後ろに新しい習慣をぶら下げる「習慣スタッキング」の考え方も有効です。「朝食後」「帰宅して玄関を開けたら」「特定のメールチェックが終わったら」など、日常生活の中に自然に組み込めるきっかけを選びましょう。
  3. 「もし~なら、~する」の形に言語化する: ステップ1と2で決めたことを、「もし〇〇(きっかけ)になったら、△△(行動)をする」というシンプルな文章にまとめます。例えば、「もし朝食を食べ終わったら、洗面台の前で5分間瞑想をする」「もし帰宅して玄関を開けたら、すぐにジョギングウェアに着替える」のように明確に表現します。
  4. 計画を意識し、実践する: 立てたif-thenプランを意識し、その状況が訪れたら決めた行動を実行します。可能であれば、この計画をメモに書いたり、スマートフォンのリマインダーに設定したりして、目にする機会を増やすと良いでしょう。

if-thenプランニングを継続するためのコツ

せっかく立てた計画も、継続できなければ習慣にはなりません。if-thenプランニングを長期的に続けるためのコツをいくつかご紹介します。

まとめ

新しい習慣を身につけることは容易ではありませんが、「if-thenプランニング」は、行動を起こすための心理的なハードルを下げ、習慣化をサポートする強力かつシンプルなテクニックです。「もし〇〇になったら、△△をする」とあらかじめ決めておくことで、私たちの脳は自動的に行動へと導かれやすくなります。

ぜひ、あなたが身につけたいと考えている習慣について、このif-thenプランニングの考え方を適用してみてください。小さな一歩からでも、着実に変化を感じられるはずです。日々の生活にこの心理学的なツールを取り入れ、より良い習慣を育んでいきましょう。