簡単ジャーナリングで日々の心を軽くする:心理学に基づいた書く習慣
日々の生活の中で、私たちは様々な感情や思考に直面します。時に心のモヤモヤが晴れなかったり、漠然とした不安に囚われたりすることもあるかもしれません。そのような時、頭の中だけで考えを巡らせていると、ますます混乱したり、同じことで悩んでしまったりすることがあります。
「ココロの習慣ラボ」では、心理学に基づいた簡単で実践しやすいテクニックを通して、より良い毎日を送るための習慣づくりを提案しています。今回は、心の整理に役立つシンプルながら効果的な習慣、「ジャーナリング(書く習慣)」をご紹介します。心理学的な視点から、なぜ書くことが私たちの心に良い影響を与えるのか、そしてそれを日々の習慣として取り入れるための具体的なステップとコツをお伝えします。
ジャーナリングとは:心を「見える化」する習慣
ジャーナリングとは、自分の感情や思考、出来事などを自由に書き出す習慣のことです。「日記」と似ていますが、必ずしも日々の出来事を時系列で詳細に記録する必要はありません。その時感じていること、頭に浮かんだこと、考えていることなど、内面の世界をありのままに言葉にするのがジャーナリングです。
特別な形式やルールはありません。ノートとペン、あるいはパソコンやスマートフォンのメモアプリでも構いません。大切なのは、 judgement(判断)を挟まず、正直な気持ちや考えをそのまま書き出すことです。
なぜ書くことが心の整理に役立つのか:心理学的な視点
ジャーナリングが心の整理に効果的であることには、いくつかの心理学的な理由があります。
1. 感情や思考の「外化」
心の中で渦巻いている感情や思考を紙や画面の上に書き出すことは、「外化(Externalization)」と呼ばれるプロセスです。内側に閉じ込めていたものを外に出すことで、まるでそれらを客観的に眺めているかのように感じることができます。これにより、感情や思考に距離を置き、冷静に捉え直すことが可能になります。
2. 認知の整理と明確化
頭の中では断片的で混沌としていた思考も、書き出すことで整理され、構造化されます。何が本当に気になっているのか、問題の本質は何なのか、自分がどう感じているのかが明確になります。これにより、問題解決の糸口が見つかったり、混乱が解消されたりします。
3. ストレスや不安の軽減
ネガティブな感情や不安な思考を書き出すことは、カタルシス(浄化)の効果をもたらすことがあります。心の中に溜め込んでいたものを放出することで、精神的な負担が軽減されます。また、不安の原因を具体的に書き出すことで、漠然とした不安が具体的な課題となり、対処法を考えやすくなります。
4. ポジティブな側面に気づく
感謝していることやうまくいったことなど、ポジティブな出来事や感情を意識的に書き出すことで、幸福感を高める効果も期待できます。ネガティブな情報に注目しがちな心の癖を、意識的にポジティブな側面に向け直す練習になります。
今日から始める簡単ジャーナリングのステップ
「ジャーナリングが良いのは分かったけれど、何をどう書けば良いのか分からない」と感じるかもしれません。まずは、以下の簡単なステップから始めてみましょう。
- 道具を準備する: ノートと書きやすいペン、あるいは使い慣れたデジタルツールを用意します。
- 書く時間と場所を決める(最初はゆるやかに): 毎日決まった時間に書くのが理想的ですが、最初は「気が向いたら書く」「1日の終わりに5分だけ」といったように、ゆるやかに始めましょう。書く場所も、落ち着ける場所であればどこでも構いません。
- 書くテーマを決める(決めなくてもOK): 最初は何でも良い、というのがジャーナリングの基本ですが、もし迷うようなら、いくつか簡単なテーマを決めてみるのも良いでしょう。
- 「今日あった良かったこと(3つ)」
- 「今、一番気になっていること」
- 「今感じている感情(嬉しい、悲しい、イライラ、落ち着いているなど)」
- 「頭の中に浮かんだこと、そのまま」
- 「もし今、何も制約がなかったら何をしたいか」 これらの問いかけに答えるように書いてみたり、「〜について」とテーマを書き出して連想するままに書いてみたりします。
- 書く内容に判断を下さない: 上手く書こう、筋道立てて書こう、正しいことを書こう、などと思わないことが重要です。誤字脱字も気にせず、頭の中にある言葉をそのまま書き出しましょう。誰に見せるものでもないので、正直に、感じたままに書くことが大切です。
- 時間は短くてもOK: 最初は数行、あるいは3分だけでも構いません。完璧を目指すのではなく、まずは「書いてみる」という行動を始めてみましょう。
ジャーナリングを習慣にするためのコツ
ジャーナリングの効果を継続的に得るためには、習慣にすることが望ましいです。習慣化のコツをいくつかご紹介します。
- 「小さく始める」を徹底する: 毎日ノートを開くことだけを目標にする、1日1行だけ書く、など、負荷の低い目標設定から始めます。
- 他の習慣と組み合わせる(アンカリング): 例:「朝起きてコーヒーを淹れたら、まず3分ジャーナリングをする」「寝る前に今日の良かったことを3つノートに書く」のように、既に習慣になっている行動とセットにすることで、行動を思い出しやすくなります。
- 場所を決める: いつも同じ場所にジャーナリングの道具を置いておくことで、目についた時に始めやすくなります。
- 書かない日があっても気にしない: 毎日書かなければ、と気負う必要はありません。書けなかった日があっても自分を責めず、また次の日から気軽に再開すれば良い、と考えましょう。継続すること自体よりも、「書くことで心を整理する」という目的を忘れないことが大切です。
- 書いたものを読み返してみる: たまに読み返すことで、自分の思考パターンや感情の傾向に気づいたり、過去の自分が抱えていた問題が解決していることに気づいたりすることがあります。これが継続のモチベーションになることもあります。
まとめ
ジャーナリングは、特別なスキルや時間、場所を必要としない、非常に手軽な心理学的なセルフケア習慣です。自分の内面を「見える化」し、感情や思考を整理することで、心のモヤモヤを軽減し、より穏やかな心で日々を過ごす助けになります。
まずは、完璧を目指さず、数分、数行からでも始めてみてください。書くというシンプルな行動が、あなたの心の状態に静かな変化をもたらすかもしれません。今日からあなたも、心の整理に役立つ「書く習慣」を始めてみませんか。